PCAポンプ
- 癌末期の痛みは自宅で緩和できる?
- 痛み止めが飲めなくなったらどうするの?
- 自分で痛み止めを調整したい。
今回は「PCAポンプ」について。
患者様、ご家族様にもわかりやすいようにご紹介します。
PCAポンプについて
PCAポンプとは点滴をする機械の機能の事です。
(Patient Controlled Analgesia:自己調節鎮痛法)の頭文字から来ています。
携帯型の「24時間一定量の痛み止めを点滴する機械」になります。
「24時間点滴をしながら痛みが強いときは自分で痛み止めを増やす」ことが出来ます。
この点滴をするPCAポンプの特徴的なところは「患者様の好きなタイミングで、痛み止めを一定量追加投与することが出来る」という事です。
PCAポンプにはお薬を追加で投入するボタンがついており、痛みが強いときには患者様ご自身や、ご家族の方がボタンを押すことが出来ます。
(例)
- 1時間あたり〇mlは常に流れている
- ボタン1回あたり〇ml追加出来る
とても強い痛み止めの点滴なので、間違えてボタンを押してもお薬が出ないように「1回ボタンを押したら〇分間は押せない」という設定が出来ます。
これを「ロックタイム」と言います。
この設定については訪問診療の医師や訪問看護師が行います。
ご自宅で癌の痛みを緩和する為には「自己調整の機能がある点滴ポンプ」を使うことで、痛みを極力なくした生活を手に入れることが出来ます。
機械のサイズは小さめで、お弁当箱くらいの大きさです。
ベッドサイドに置いてもおけますし、トイレに行くときなども簡単に持ち運びが可能です。
癌の痛みを取る方法は様々
ご自宅で療養する上で、癌の痛みとうまく付き合っていく必要があります。
癌の痛みをとる方法はいくつかございまして
- 錠剤、粉薬、液体などの口から痛み止め
- シールタイプで体に貼る薬
- 座薬
- 点滴
優先順位は口からお薬を飲むことで、決められた時間に痛みの度合いに応じた量を規則正しく飲む事が大切です。
しかし癌患者様の場合、嘔吐が頻回な方もいますし、下痢になってしまう方もいます。
そうすると飲み薬や座薬はうまく使えません。
一人暮らしや寝たきりの方は、規則正しくお薬を飲むのも困難なケースもあるでしょう。
シールタイプであればそのあたりはクリア出来ますが、痛みが強くなったときにすぐ改善する事が出来ません。
そこで活躍するのがPCAポンプです。
PCAポンプのメリット
在宅医療でPCAポンプを使用する一番のメリットは「本人・家族が自分で一定量の痛み止めを追加投与出来る」事です。
注射などの痛み止めを打つ場合は、医師や看護師を呼ぶ必要があり、到着までの待ち時間があったり、何より気を使って我慢してしまう患者様もいます。
痛みの出る時間帯などがあらかじめ予想出来る場合、例えば朝と夜に痛みが強くなるのであれば、事前にボタンを押すことも出来ます。
もし頻回にボタンを押すようであれば、1時間あたりの流量を増やすことでボタンを押す回数を調整することができ、早い段階で痛みのコントロールをすることが可能です。
癌による症状、あるいはせん妄などでボタンを何度も押してしまう、飲み薬の場合は過剰に内服してしまうリスクがありますが、PCAポンプはロックタイム(安全装置)があるため、このようなリスクを防ぐ事が出来るのもメリットのひとつです。
緩和ケアを行う上でPCAポンプは患者様に非常にメリットがあります。
住み慣れた自宅での生活を豊かにするために、当院では日々患者様目線での診察を心がけております。
近隣の訪問看護ステーションの皆様へ
PCAポンプを導入する際は、流量などの調整をお願いすることがあります。
医師から指示がありますので、可能な範囲でご対応をお願い致します。
操作方法などご不明な場合は事前にお問い合わせください。
エコー(超音波検査)
- 腹水や胸水がたまっている。
- おしっこをしても残っている気がする
今回は「エコー(超音波検査)」について。
患者様、ご家族様にもわかりやすいようにご紹介します。
エコーについて
訪問診療においてもエコーの検査が可能です。
- 心臓
- 腹部
- 頸部
- 肺
- 膀胱
などにご病気をお持ちの患者様は、ご自宅で検査をする事が出来ます。
ポータブルエコーと言いまして、片手で持てるくらいの大きさです。
エコーを使うシチュエーションとして、ご病気の経過をフォローする目的で使用する事と、急な状態の変化の際に原因を特定する為に使います。
すぐに持ち運びが出来る様に小型で訪問診療に特化しており、起動も速いことから当院ではポータブルエコーを使用しています。
見やすいモニターもついているため患者様と一緒に画像の確認が出来ます。
エコーが活躍する時(尿閉:にょうへい)
訪問診療でエコーを使う際、患者様からの訴えとしてこのようなものがあります。
- お腹が張る
- 尿が出ない
- 胸水が溜まっている
ご自身で症状をお話頂ける場合はもちろんすぐに対応出来るのですが、ご自身で訴える事の出来ない患者様もたくさんいらっしゃいます。
ご家族様や、介護施設の職員様より「尿が半日出ていない」、「苦しそうな表情をしている」とご連絡頂き、初めて気がつく事もよくあります。
限られた情報の中で最適な処置を判断する為にエコーを使用します。
先ほどの
- 尿が出ない
- 苦しそうな表情をしている
こちらを例に出しますと、尿閉(にょうへい)という症状を疑います。
尿閉と言うのは、尿が出る通り道が何らかの原因で塞がってしまう事により起こります。
- 尿を出す筋肉の問題
- 薬による副作用
- 神経の問題等
これらにより尿が全く出ないか、あるいは少し出たとしてもまだ膀胱の中に多量の尿が残っている状態の事を言います。
このような状況の時にエコーを使うと、「膀胱の中にどれくらいの尿が残っているのか」を調べる事が出来ます。
膀胱にたくさん尿が残っているのに尿が出ないのであれば「尿閉」と分かり、その場でバルーンカテーテルと言う、尿を出す管を挿入し処置・排尿をします。
尿が出た後に再度エコーで確認することで、医師と患者様との間でよりお体の状況をわかりやすく説明出来ると言うことです。
訪問診療の現場においては、すぐに処置をしなければ救急搬送になってしまうケースもあります。
患者様の苦しい状況を取り除くためにも、エコーを使うことが大切です。
自宅で胸水・腹水を抜く(穿刺:せんし)
癌患者様の場合は、癌の種類を問わず胸やお腹に水が溜まります。
水が溜まると呼吸が苦しくなったり、お腹が張ってしまい自宅での生活が大変になることも。
水を抜くために、毎週のように通院するのは体力的にご負担が多いと思います。
ですがエコーがあると、ご自宅で腹水や胸水を安全に抜くことが出来ます。
そして在宅での穿刺にはエコーが不可欠です。
針を刺すための適切な場所をエコーで探し、合併症・感染症にならないように清潔な状態を保ちながら自宅でも安全に処置が出来ます。
しかし腹水や胸水は抜くことによって栄養も一緒に排出されてしまうというデメリットもあります。
穿刺が頻回な場合は、在宅でのCART療法などもご提案出来ますのでご相談ください。
何より水が溜まることによる患者様のつらさは相当なものです。
自宅でも穿刺が出来ると言うことが患者様の安心材料になれば幸いです。
適切な医療機器の使用で入院を減らす
訪問診療が介入しているからには、できるだけご自宅での生活をフォローしたいと考えております。
これまでは入院して検査をする必要があった患者様も
- エコー
- レントゲン
- 心電図
- PCAポンプ
など医療機器を活用すれば、病院と同じ検査や処置が可能です。
特に終末期の患者様においては住み慣れた自宅で安心して過ごす事が出来ます。
当院にはこのような医療機器を活用し、患者様・ご家族様のサポートをさせて頂きます。
ポータブルエコーは、訪問診療をする医師の声をヒアリングして開発されました。
患者様にとって有益で、ご自宅ならではの寄り添った診察をするための一つのツールです。
ポータブルレントゲン
在宅でのレントゲン検査についてご紹介します。
- 肺炎を繰り返しているから心配。
- 急に腰が痛くなった。
- 施設に入所するのに胸部のレントゲンが必要。
今回は「ポータブルレントゲン」についてご紹介致します。
訪問診療でもレントゲンが可能に
訪問診療をしていると患者様から「レントゲンを撮りたいけど通院が大変で」という声をよく聞きます。
「自宅でもレントゲン撮れますよ」とお伝えすると、患者様・ご家族様から大変驚かれるものです。
医療機器の進歩により、訪問診療でも病院と同じような検査が出来るようになりました。
- 心電図
- エコー
- 血液ガス
その中でも「ポータブルレントゲン」があることで、患者様のご病気を早期に評価することが出来ます。
ポータブルと言う名の通り持ち運びが可能なレントゲンです。
決して小さくはないのですが、スタッフ一人で持ち運びが出来るサイズです。
- エレベーターの無い団地
- 6畳程度の部屋
スペースが限られる在宅医療の、このような環境でもレントゲンの撮影が可能です。
バッテリー内蔵ですので、患者様宅でコンセントをお借りする事もございません。
ノートパソコンも付属しておりその場で撮影画像を確認できますので、患者様・ご家族様と一緒に画像を見ながら説明出来ます。
撮影画像をクリニックに持ち帰り確認していると患者様をお待たせしてしまいますが、ポータブルレントゲンならその場で今後の方針を話し合うことが出来ます。
自宅でレントゲンが撮れる事のメリット
自宅でレントゲンが撮れる事で、患者様にはこのようなメリットがあります。
- 肺炎(特に誤嚥性肺炎)の有無
- 骨折の確認
- 経鼻カテーテルの挿入確認
- 健康診断の胸部レントゲン
肺炎や骨折に関してはレントゲンで確認出来る事をご存じの方も多いと思います。
経鼻カテーテルと言うのは、鼻から細い管をいれて胃に直接栄養を入れる処置の事です。
鼻から管をいれた後に、しっかり挿入できているかどうかをレントゲンでチェックします。
健康診断については、ケアマネージャー様からのご依頼が多いかと思います。
施設入所の際に「胸部レントゲン」が必須項目になっている施設は多く、レントゲン撮影の為に受診をする患者様も多くいらっしゃいます。
当院の場合は自宅で、ポータブルレントゲンにて対応可能です。
施設入所に必要な健康診断の項目は
- 胸部レントゲン
- 採血
- 感染症(MRSA・HCV・HBS)
- 心電図
このような項目が一般的ですが、すべて訪問診療で対応可能です。
ポータブルレントゲンのデメリット
訪問診療を受ける患者様においては、ポータブルレントゲンは非常にメリットの多い医療機器ですが、デメリットもあります。
やはり「ポータブル」では、病院に据え置きのレントゲンよりは精密さは劣ります。
- 圧迫骨折の鮮明な画像
- 胸部レントゲンの詳細な画像
など、詳細では無く全体像での判断になることもございます。
原因がわかった上で搬送するのか、疑いで搬送するのか
訪問診療では「通院したときと同じような診察が出来る」とはいえ、やはり限界もあります。
例えば患者様が転倒し、明らかに大腿骨が骨折していそうな場合。
医師はレントゲンを撮るまでもなく、骨折だと判断出来ます。
しかし、そこでレントゲンを撮って「間違いなく骨折」と判断し搬送した方が、患者様・ご家族様、そして受け入れ先の病院も納得の上行動することが出来ます。
結果的に「搬送する」と言う行為に違いはありませんが、「骨折しているだろう」で搬送するよりも、「レントゲンで確認した結果骨折している」と原因を明確にした上で次の手を考える事も在宅医療では重要です。
また、呼吸苦の訴えがあった場合も、心不全なのか肺炎なのかレントゲンで確認し、適切な治療をする事が可能となります。
特に高齢者の場合は肺炎を原因とする入院が多いです。
適切な診断をするためにもポータブルレントゲンは必要不可欠です。
ポータブルレントゲンでも訪問診療という設備が限られる現場では、得られる情報が多く患者様にとって重要な事が多いです。
まとめ
365日24時間体制で診察をする当院にとっては、地域の患者様のためにあらゆる症状に対応する必要があります。
通院困難な患者様の対応には、「早期にいかに適切な治療が出来るか」が必要だと考えております。